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第12回 池松彦繁先生

池松彦繁先生 在校歴:昭和22年8月~昭和57年3月 担当教科:地学

紹介者からのコメント・S.48 前田俊明

私たち悪がき連中は、池松彦繁先生を生徒間では池松ちゃん、彦しゃん、またその風貌から鉄腕アトムのお茶の水博士と呼ばせていただいていました。偶然かどうか定かではありませんが池松先生担任の我がクラスには先生のお名前の[彦]が康彦、幸彦2名、哲彦、一彦とそろい、彦しゃんクラスの異名をもっていました。
わたしの記憶のあるかぎりここで先生のお人柄をあらわすエピソードを3つ紹介させていただきます。
まず、先生の天真爛漫なお人柄。ある日、級長を決めるとき仕切り屋としてその右に出る者はいないU君を名指しされて「U、級長してもろてよかや」そしてU君「先生、よかです」U君はノーと否定したつもりが何事にもおおらかな先生はイエスと受け取られて、それで級長が決まってしまいました。卒業後、U君が事の真相を先生に打ち明けたとき、ただ「そうだったか。ワッハッハワッハッハ」と豪快に笑われていたのが印象的でした。
次は、生徒から慕われるお人柄。卒業前のある夜、失恋したY君とそれに付き合ってたI君がぐてんぐてんに酔っ払って先生のご自宅に押しかけて、先生はその若きウェルテルの悩み?に、おつきあいさせられたとか。未成年飲酒の処分に悩まれたのは先生の方ではなかったのでしょうか。処分があったかなかったかは定かではありません。
最後に熱き教育者としてのお人柄。当時、先生は学年主任として私たちが入学してから卒業までを一貫して受け持たれていました。そして卒業の日、生徒への思いを涙ながら言葉にならないほど熱く語られました。その涙に教師として私たち学年全生徒を1年から3年までわが子のように見守り育ててきた親と変わらぬ涙を感じたことを卒業して32年、昨日のことのように思い出します。
親の心子知らずの在学時ではありましたが、「ばかやろー」と怒鳴られ正座させられたこと、三者面談で無謀な大学選択にも受験させていただいたこと、運動会の騎馬戦で先生を顔面から落としてしまったこと、すべての思い出が感謝の心でいっぱいで
す。最近ではフランス語や鶴屋での買い物など、ご自分の世界を楽しまれておられるご様子。また悪がきたちの同窓会で「ばかやろー」節をお聞かせください。

池松彦繁先生からのコメント

在職当時の池松彦繁先生

私が濟々黌に勤め始めたのは、昭和22年で、今から60年ほど昔のことである。当時は太平洋戦争で日本が大敗し、各都市が米軍のすさまじい大空襲により焼く尽くされ、住むに家なく、食うに米なく、読みたい本買えず、書く紙もないという、全くないないづくしの悲惨な時期であった。熊本市内も焼け野原同然で、学校の校舎とて例外ではなかった。
生徒は雨天の日には傘をさして授業を受けねばならぬような急場づくりの小屋で教室にしていたことが8年位続いた。このような有様はおそらく今の生徒には想像つくまい。だが濟々黌の生徒は意外と陽気で、擦り切れてうすく板のようになった下駄ばきで、勇んで元気よく登校してきていて、少しも消沈したところがなかった。
私は最初数年間は数学を教えていたが、大いに鍛えようと、日課考査をよく実施したものだったが、それに使用する用紙がないので、しかたなく、前年の生徒の数学以外の答案の裏を利用させてもらっていた。殊に昭和26年卒(この卒業生は濟々黌に6年間在学していた)は優秀なものが揃っていて私が逆に鍛えられるくらいであった。彼等は言っていた。「われわれが入学する頃は濟々黌に入れそうもない奴は熊中(今の熊高)へ行っていた。」と。たしかに濟々黌は全国的に名をあげていて、創立の精神がそうであったように、天下国家のためにやるぞという意気込みが黌内にみちみちていた。
授業を始めると、私の若さからでもあってか、質問をじゃんじゃん投げかけてきた。中には変な質問もあって、そんなのには「ピントがはずれている。お前はピンボケだ。」とやっつけてやった。そんなことがあって、私のニックネームはピンボケとなり、たちまちその名が黌内に拡がってしまった次第である。いわばそれは私の山びこみたいなものだ。
彼らは卒業してからも、よく濟々黌のことを忘れず、同窓生一体となって連帯し、公のため大いに健闘し他の卒業生からも一目も二目も置かれていた。まことに思い出深い学年のひとつである。
濟々黌は私の大好きな学校である。終始一貫して退職するまで35年間も勤めさせてくれた学校であってみれば当然かもしれない。
濟々黌が益々発展されることを祈る。

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